ウン十年前、原発反対の署名運動をした。環境問題にも取り組んできた。その上で、原発は必要悪だと納得した。電気がなければ日本は1日もやっていけない。放射線で1人も死ななかったが、真夏に都会で電気が数日止まれば数万人の死者が出てもおかしくない。農業も電力なしでは成り立たない。電気がこなければ水もでない。
原発が必要だった理由の1つが電力の安定供給だ。
石油原産国に振りまわされるのを避け、安定した電力が供給されなければ、近代工場など操業することは不可能だ。石油ショックの際の騒ぎも覚えている人は多いだろう。堺屋太一の「油断」を読んで、ありうると鳥肌が立った。第二次世界大戦のそもそももも石油が大きな原因の1つだと聞いている。
太陽光発電など自然由来の電力は3.11の後、急ピッチで伸びているが2013年現在でまだ2.2%に過ぎない。つまり今でもまだ微々たる割合に留まっている。その上、パネルは地震で壊れても発火するし、自然破壊ももたらす。また日本のように台風、大雨などに絶えずさらされる国では安定した電力を太陽や風などに頼ることは出来ない。
化石燃料、特にコストの低い石炭での火力発電所の建設も進められているが、世界では石炭はCO2を排出し、空気を汚染すると禁止の方向への動きがある。おまけに、中国などの電力消費が増大したあおりで石炭輸出国だった中国は輸入国に転じ、受給が逼迫、コストは増大してきている。
京都議定書での約束、その後の協定で、日本はCO2排出量を2030年度に2013年度比▲26.0%(2005年度比▲25.4%)の水準まで削減することを約束している(環境省データ)。できなければ巨額の賠償が待っている。途上国から排出権を購入したりもしているが(ここでも多額の資金流出)、すでに乾いた雑巾を絞ると言われるほど省エネに取り組んできたその上だから不可能だというのが多くの見方だ。つまり歳出が大幅に増加するだろう。高齢化による福祉関連費用の増大に加えてだ。
原発を止めたことにより、東日本大震災から4年間ですでに11.5兆円が煙となった。地震対策、福祉費用、高齢化・少子化対策、その他諸々に有効活用できたかも知れない巨額の資金が煙になったのだ。この先も同様に煙となる。
個人も企業も省電力を目指して頑張っているが、まだまだ道は遠い。私事だが311以前と比べ電力消費量は2割ほど減少したが、これ以上の削減はもう無理かもしれない。
経済産業省の「エネルギー白書」をベースに書かれた日本の発電力の供給量割合[最新版](火力・水力・原子力・風力・地熱・太陽光等)に詳しいので関心がある方は参照していただきたい。
ここに中国問題が加わる。
南沙諸島、西沙諸島の領有権を主張し、すでにミサイルを配備し、滑走路も完成している(2月17日付BBC)。
中国は国内問題が爆発寸前と言われ、そのようなときには外にたいして攻撃的になるのが常で、周辺諸国との緊張感が増している。
このBBCの地図を見れば一目瞭然だが、これらの基地は日本向けの石油タンカー等、物資運搬の航路に当たる。つまり、何かあれば、石油の輸入がたちまち止まるのだ。そして中国は沖縄でさえ元は自国領土だったと公然と口にするほど攻撃的だ。
福島以来、原発が怖い、地震国でしかも活発化している。心情はよく分かる。私だって怖い。
しかし、福島原発は地震では壊れたのではない。津波による電源喪失で水を循環させることが出来ず爆発した(福島第一原子力発電所−WIKI)。替えの電源を確保できた福島第二は問題を起こさず避難民を受け入れた。
なぜ代わりの電源がすぐに入手できなかったのか。
福島第一原発が米国のGE製だったために、すぐには取り寄せられなかったのだ。もちろん、あの津波の惨状で道路は寸断、がれきが山積だったこともあるが日本製であったらもっと早く入手できただろう。ではなぜ米国製であったのか。
その頃生じていた激しい日本叩きと関係があると私は憶測している。米国から何か購入する物がないか日本から買い物の使節団が渡米したこともある。私がいた某都市では日本人と間違えられた中国人男性が殺害されるという事件も生じた。多数の米国企業が競争に負けて苦境に立たされていたためだ。
電源が喪失しなければ、爆発は生じなかった。そして電源問題は解決されているし、耐震対策も、地質調査も新たになされた。
また、停止するだけではリスクは同じだ。
点検中で分解停止していた4号機が一番危ない状態に陥ったという。
廃炉には取り出したプルトニウムの処理などの困難な問題がつきまとう。ならば古くなるまでのある程度の期間、使用した方が合理的ではないか。
さらに、原子力関係は裾野の広い分野である。関連企業も関連技術も多い。日本には今まで蓄積してきた多くの技術があるのに、それがなくなったら、この先の廃炉に至るまでの期間の点検、メンテナンスなどの技術者の育成はどうなるのか。
また周囲には大量の原発を抱える国が存在する。例えば、韓国は30基といわれ、原発がクリーンなエネルギーを創出するからと中国は270基を計画・建設している。これらの国での管理はどうなっているのか。ただでさえビルや鉄道の崩壊や事故の多い国なのに、非常に怖い。日本の技術で助けられるかもしれないのにとも思う。
以上を考え合わせると、順次、減らして将来は無くすにしても、八方ふさがり。当面、原発は動かさざるを得ないとしか思えないのだ。
尚、人それぞれ、考え方が違うから面白いと思っています。イデオロギーに偏らない異論、反論がある方、どうぞ。